私がレンタルサーバー業を始めた時は、海外サーバーのリセールをしていた。1996年の話である。当時はレンタルサーバーが非常に高価で、数もそれほど多くなかった。
リセールを始めたきっかけは、私が初めて独自ドメイン(usemanage.com)を取得するのに米国のサーバーを申し込んだ時に、そのサーバー業者から「これからホスティング事業を始めるので、ぜひ日本のお客様を紹介してほしい」と頼まれたことに始まる。
その業者の名前は Infoboard Inc. 。残念ながら既に解散してしまったが、非常に思い出深い。社長の Richard Frenkel氏と、創業メンバーの John Miker氏は、私の片言英語に対してとても親切に受け答えしてくれるだけでなく、細かなテクニックや最新のインターネット技術動向等をとても親切に教えてくれた。
当時、私は WindowsNT サーバーの知識はあったけど、UNIX サーバーの知識やノウハウがほとんどなくて、お客様からの質問がチンプンカンプンだった。procmailとかaliasとかいう知らないキーワードが出てくると、夜のうちに John Miker氏に直訳英語で質問メールを出しておくと、朝(米国では夕方)までにはきちんど回答をくれるのである。最初の2年間は、ほとんど毎日のようにメールのやりとりをしていた。
私は、Infoboard社の名前を、申し込む前に知っていた。
『はじめてのCGI』(大塚恵太)
『バーチャルカンパニー―インターネットでビジネスを立ち上げる!』(佐藤尚規)
の2冊の本の中で紹介されていたが、Infoboard社も当時は The Sphere という会社のサーバーをリセールしていて、私が申し込んだ usemanage.com も The Sphere 社のサーバーだった。
この後、Infoboard社は自社サーバーを使ってのホスティングを開始した。
月額料金は、 Economy Plan $25、 Standard Plan $40、 Senior Plan $150 であり、リセラーの条件は、2アカウント目からは2割引になるということだけだった。
Infoboard社はその後、規模を拡大してスタッフも増えたが、1999年の秋に BiznessOnline.com社と合併した。もちろん Infoboardブランドはそのまま継続していたのだが、だんだんとサポート対応が悪くなってきた。John Miker氏に直接連絡すればきちんと対応してくれたけど、サーバーが落ちても週明けまで対応してくれないことが何度かあった。
そして2001年7月、Infoboard社のいくつかのサーバーが完全に停止した。今まではwwwがダウンしていてもメールは大丈夫だったけど、その時はDNSから何から全滅で、Infoboard社と連絡がとれなくなっていた。
結局、数日後に完全復旧したけど、それから間もなく BiznessOnline.com社のサーバーに切り替えるという連絡が来た。Infoboard社の方はおそらく、一括解約と金銭的ペナルティ等によって継続不可能になったと予想される。
私の方はといえば、Infoboard社がそろそろ危ないと感づいていたので、2001年6月に国内に専用サーバーを2台ほど確保していたので、7月のトラブルがきっかけで国内サーバーへの移行が加速し、それほど大きな混乱はなかった。
Infoboard解散後も 元社長の Richard Frenkel氏はサーバーの移行について親身になってサポートしてくれたので、とてもうれしかった。彼からの最後のメールには、こう書かれていた。
I no longer work for Biz (the Infoboard office was closed for various reasons mostly related to finances).
ちなみにBiznessOnline.com社はいつの間にか Vera net Solutions に変わっていた。
今までの担当者と連絡がとれなくなった時は、黄色信号である。
ここに入っていた最後のユーザーを脱出させるのにちょっと手こずった。
ドメインの Technical Contact のメールアドレスが BiznessOnline.com 社のものになっていたからである。ドメインのパスワードを誰も知らず、ネームサーバー変更に応じてもらえる見込みがなかったので、11月、レジストラ変更で対応して、脱出完了である。
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